書籍紹介

水田と前方後円墳

巨大前方後円墳はなぜ突然現れまた消えていったのか

田久保 晃(たくぼあきら)   

2019年07月11日

前方後円墳は墓であるとともに巨大な溜池であった。農業土木技術者が語る古代史の謎。

弥生時代に日本に伝わった稲作は、水を池に貯める技術が生まれたことで飛躍的に発展する。それは、自然頼みの稲作から、自然を改変し制御する稲作への転換だった。この「溜池」の起源を前方後円墳の周濠にもとめ、日本独自の水田稲作の発展と古代国家形成の謎に迫る。

■第1章 前方後円墳との出会い
生まれた古代史への興味/最初の謎
1 崇神天皇陵
親子溜池だった崇神天皇陵の周濠/水源を求めて歩く/今も続く水利組合による水管理
2 山の辺の道
巨大前方後円墳のふるさと/「溜池の道」だった「山の辺の道」
3 ジグソーパズルの始まり
国のまほろば/ジグソーパズルの最初の手がかり

■第2章 弥生時代の日本列島
1 弥生時代の水田稲作
稲作の伝来/水田稲作の伝播/水田稲作普及の秘密/まばらだった弥生水田
2 弥生時代の生活を考える
米の役割/弥生時代の人口増加/三つ巴の文化圏
3 弥生時代の奈良盆地
奈良盆地特有の自然/唐古・鍵遺跡を考える/奈良盆地の住民たち
奈良盆地のもう一つの文化圏
4 ジグソーパズルの次の手がかり
「私の技術のルーツ探し」の再確認/パズルを解く次の鍵/『記紀』に手がかりを求めて

■第3章 巨大前方後円墳の出現
1 巨大前方後円墳の謎
前方後円墳の謎を解く鍵/末永博士の「周濠溜池機能説」
2 私の技術からみた前方後円墳の誕生
円墳から前方後円墳へ/纒向の大集落と前方後円墳/最初の巨大前方後円墳
3 巨大前方後円墳の威力
「纒向」から「オオヤマト」へ/周濠は溜池としてどれほど効果があったのか/前方後円墳の立地条件
4 空白の四世紀と前方後円墳
次々と築かれた前方後円墳/列島各地への前方後円墳の広がり/ヤマトの「教化」の真の狙い/奈良盆地における前方後円墳の空白地帯/海人族と前方後円墳
5 成長の限界
古墳時代の人口と農地面積/成長の限界を探る

■第4章 拓かれた水田
1 神頼みだった弥生水田
海岸や湖畔の低湿地に拓かれた湿田/やや傾斜のある低湿地に立地する半湿田
2 乾田開発の始まり
乾田地帯の開発と鉄器の使用/乾田の用水量と生産性/纏向川扇状地の水田
3 日本の水田のプロトタイプ
ヤマトの水田/標準化されたヤマトの水田
4 ヤマトは盆地の北へ向かった
新田開発の道/ヤマトが選んだ開発の道
5 ヤマトの灌漑水田と条里水田
条里水田の起源/ヤマトが広めた水田と前方後円墳
6 火山灰と水田
古墳時代の小区画水田の謎/保渡田古墳群と水田遺跡/火山灰台地の上に築かれた西都原古墳群
7 倭は国のまほろば
倭健命の「国偲びの歌」/日本人が思う故郷の原風景

■第5章 大王と巨大前方後円墳
1 河内の開発
大阪平野に築かれた巨大前方後円墳/苦闘する前方後円墳の築造
2 巨大前方後円墳を企画・造営した技術
前方後円墳を築いた技術者集団/謎の「造出し」/前方後円墳築造技術の規格化/集まらなくなった周濠の水
3 ヤマトの成長の限界
「倭の五王」の時代/謎だらけの陪塚/古市大溝と前方後円墳
4 氏族たちのクニ興し
火山灰に埋まっていた古代集落/焼畑と前方後円墳
5 見えてきた私の技術のルーツ
農業土木技術を生みだした前方後円墳/ジグソーパズルの最後のピースを求めて

■第6章 消え去る前方後円墳
1 新しい時代への胎動
六世紀における前方後円墳の造営/六世紀のヤマト
2 末期の前方後円墳
大阪平野からの撤退/前方後円墳による最後の水源開発/見せかけの巨大前方後円墳・見瀬丸山古墳
3 必要とされなくなった前方後円墳
谷池の誕生/狭山池を築いた技術/受け継がれた溜池の技術
4 仏教の伝来と国神信仰
仏教の伝来と国神の世界/『十七条憲法』に隠された氏族社会の否定/「大化の改新」に至る道
5 前方後円墳の終焉
国の乱れのもととされた前方後円墳/「大化の改新」と前方後円墳の消滅/律令国家への道
6 行き着いた先
早くも狂いだした律令国家の土地制度/土師部たちの溜池/土師部たちのその後

■第7章 完成しないジグソーパズル
1 できあがったジグソーパズルの絵
私の技術のルーツ/低い土地に住むようになった日本人
2 水田と日本人
大開田と高度経済成長/ムラの衰退と日本社会の変貌/今の日本社会を考える
3 これからどうする
農業土木技術による得失/農業土木技術の将来を考えるうえでのヒント

田久保 晃(たくぼ・あきら)

1947年生まれ。東京農工大学農学部農業生産工学科卒。元・NTCコンサルタンツ(株)。技術士(農業部門、農業土木)。農業農村工学会会員。山崎農業研究所会員。

水田と前方後円墳

巨大前方後円墳はなぜ突然現れまた消えていったのか


関連書籍詳細

水田と前方後円墳

ISBNコード:9784909275011
発行日:2018/11
出版:農文協プロダクション
判型/頁数 B5変 304ページ

方後円墳は墓であるとともに巨大な溜池であった…。農業土木技術者が語る古代史の謎。

弥生時代に日本に伝わった稲作は、水を池に貯める技術が生まれたことで飛躍的に発展する。それは、自然頼みの稲作から、自然を改変し制御する稲作への転換だった。この「溜池」の起源を前方後円墳の周濠にもとめ、日本独自の水田稲作の発展と古代国家形成の謎に迫る。
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