聞き書 千葉の食事 九十九里海岸の食より
背黒いわしの頭、はらわたをとり、水で洗ってよく血出しをし、魚の一割から一割五分の塩をふって一晩塩漬けする。そのあと骨をとり、半日くらい酢漬にしておく。
豆腐から(おから)を背黒いわし五〇〇匁に対して一升くらい用意する。からは、ふだんは豆腐屋から買うが、農家では、もの日の前の日には豆腐を家でつくるので、それを使う。豆腐のから一升に砂糖四〇〇匁、塩と酢を少し入れ、大なべでつゆけのなくなるまで煎り煮して冷ます。
酢漬いわしの酢をしぼったものと、煎り煮したから、しょうがとゆずの皮、とうがらしのせん切り、ごまを混ぜあわせ、味をなじませてから食べる。冬は一週間くらい、春は二日くらいもつ。
からずしは甘くて、秋から春にかけての日常のお茶うけに喜ばれる。毎月二十三日に行なわれる三夜さま、一月十五日の女びしゃ(子安講)、一月二十八日の男のびしゃなどの行事食にも使われる。
出典:高橋在久 他. 日本の食生活全集 12巻『聞き書 千葉の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.42-42