聞き書 石川の食事 能登山里(徳成)の食より
すす、またはなれずしとも呼ばれ、奥能登では古代と同じ方法が伝承されて各家で漬けられている。祭りにはなくてはならない食べものである。魚はうぐい、あゆ、あじ、さば、はちめ(めばる)、たい、鮭などを使う。
小魚は目玉と内臓をとって一尾のまま、大きい魚は切身にして塩漬けする。徳成では四月末に川でとれたうぐいを使うことが多い。塩を濃くふり、強い重石をして一週間から一か月ぐらい漬けておく。
五月下旬から六月上旬、さんしょうの葉が大きくなったころを見計らって本漬けする。めしをこわめに炊き、魚の塩加減によっては塩を加え、冷ましておく。桶にめしとなんば、さんしょうの葉をたっぷり敷き、塩漬けした魚を酢にくぐらせて並べ、その上にめし、なんば、さんしょうの葉などを魚が見えないくらいにかぶせる。次にまた魚を重ねて交互に幾層も漬けこむ。手水は酢である。最後にめしが見えないようにさんしょうの葉で押さえ、押しぶたをして重石をのせる。
虫が入らないように密閉して、四〇日から五〇日おくと味もよいころあいになり、魚は骨までやわらかくなる。
発酵したひねずしは、三年間は保存できる。ひねずしを漬けるすし桶はそれ以外には使わないことになっている。
写真:左から ひねずし、こぶ巻き、たけのこなどの煮しめ、ぜんまいと油揚げの煮しめ
出典:守田良子 他. 日本の食生活全集 17巻『聞き書 石川の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.250-250