聞き書 福島の食事 阿武隈山地の食より
■夕─そばのけんちん汁、焼き魚、白あえ、漬物
今夜は寒さが厳しくなると思うと、ねり鉢を出してそば粉をこね、そばを打つ。そばのゆで汁は、すてずに飼い馬の餌に与え、むだにしない。そばの汁は、じゃがいも、にんじん、ごぼう、こんにゃく、豆腐、ねぎの入ったけんちん汁にする。これは、寒い夜のごちそうで、からだが温まり、何杯もおかわりをする。おかずは、いわし(まいわし)か、かどいわし(にしん)を焼いたもの、豆腐を使った白菜や人参の白あえ、漬物は、たくあんや白菜漬をつける。
男も女も、夜なべ仕事に葉たばこのしをするので、いろりの自在鉤に大きななべをかけ、かぼちゃ、さつまいもなどを煮て、夜食をつくる。そのほか、温かい粉焼き(小麦粉を溶いて焼いたもの)や、いろりの灰で焼く焼きいもなどを食べることもある。
写真:冬の夕食
上:焼きにしん、白あえ(豆腐、白菜、にんじん)/下:そばのけんちん汁(じゃがいも、にんじん、ごぼう、ねぎ、こんにゃく)、たくあん漬
出典:柏村サタ子 他編. 日本の食生活全集 7巻『聞き書 福島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.225-227