寒い夜は、そばのけんちん汁で温まる―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2021年11月22日

聞き書 福島の食事 阿武隈山地の食より

夕─そばのけんちん汁、焼き魚、白あえ、漬物
今夜は寒さが厳しくなると思うと、ねり鉢を出してそば粉をこね、そばを打つ。そばのゆで汁は、すてずに飼い馬の餌に与え、むだにしない。そばの汁は、じゃがいも、にんじん、ごぼう、こんにゃく、豆腐、ねぎの入ったけんちん汁にする。これは、寒い夜のごちそうで、からだが温まり、何杯もおかわりをする。おかずは、いわし(まいわし)か、かどいわし(にしん)を焼いたもの、豆腐を使った白菜や人参の白あえ、漬物は、たくあんや白菜漬をつける。
男も女も、夜なべ仕事に葉たばこのしをするので、いろりの自在鉤に大きななべをかけ、かぼちゃ、さつまいもなどを煮て、夜食をつくる。そのほか、温かい粉焼き(小麦粉を溶いて焼いたもの)や、いろりの灰で焼く焼きいもなどを食べることもある。

写真:冬の夕食
上:焼きにしん、白あえ(豆腐、白菜、にんじん)/下:そばのけんちん汁(じゃがいも、にんじん、ごぼう、ねぎ、こんにゃく)、たくあん漬

 

出典:柏村サタ子 他編. 日本の食生活全集 7巻『聞き書 福島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.225-227

関連書籍詳細

日本の食生活全集7『聞き書 福島の食事』

柏村サタ子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870972
発行日:1987/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

にしん漬・三五八漬を肴に会津の酒を酌む。うにの貝焼、あんこう料理は浜通りの名物。豊富な食素材を伝統の生活知が生かす「みちのくのまほろば」福島ならではの味。
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