聞き書 島根の食事 宍道湖・中海沿岸の食より
■晩飯―麦飯、くじら汁、干しせいごと大根の煮もの、漬物
ふとんに包んだり、こたつの横に置いて温めておいたごはんは、夕方にはくさくなる。麦飯はとくにくさくなりやすいので、夜はごはんを炊くようにしている。この季節になると、皮つきのくじらの脂身が砥石のような形で八百屋に売られている。冬の食事に欠かせない素材の一つである。薄く短冊に切り、塩出しをして白かぶと一緒に味噌汁の実にし、小口ねぎを入れ、脂の浮いた熱い汁をふうふう吹きながら食べるとからだが芯から温まる。
秋の終わりから冬にかけてとれた小さめのせいごを炭火であぶって干したものと、うまいと評判の高い、浜佐陀特産のはなそげ大根を一緒に煮ると、互いに味がしみこんでおいしく、家族が好んで食べる。
このほか、野菜に赤貝、こんにゃくなど入れて薄くず仕立てにしたのっぺ汁、野菜、こんにゃく、豆腐を使ったけんちん汁など、寒い日に喜ばれる料理をときどきつくる。また、浜佐陀から松江市内へは歩いて片道一時間ほどで出られるが、家族が用事で出かけると牛肉を買って帰り、野菜と煮こんで食べる。これも寒い冬の楽しみなごちそうの一つである。
写真:冬の晩飯
上:干しせいごと大根の煮もの、津田かぶ漬/下:麦飯、くじら汁(くじら脂身、白かぶ、ねぎ)
出典:島田成矩 他編. 日本の食生活全集 32巻『聞き書 島根の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.16-19