薹菜に岩船かぶ、やまうどにあさづき―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年04月04日

聞き書 新潟の食事 岩船の食より


一日ごとに日足がのびる。陽だまりの三面川原や畑の土手には、雪解けの場所からふきのとうやあさづきが芽を出してくる。
四月に入ると味噌煮がはじまり、あちこちから大豆を煮る甘い香りが流れてくる。子どもたちは、糸をつけた木綿針で煮えた豆をつないで、首飾りのように輪にして干しておく。ほどよく乾いたのを首にかけて、楽しみながら食べる。冬中を通して食べた囲い大根も、暖かくなるとすが入ってまずくなるので、干しかぶ(干し大根)にしておく。
水田での農作業がはじまり、春耕に出た若夫婦の一服休みには、親たちからきな粉もちが届く。寒中に水につけておいた水もちは五月ころまでももつ。このもちを焼いて湯に浸し、きな粉をまぶすのである。あぜに腰をおろしての一服休みに、温かいきな粉もちはやわらかくておいしく、力がわいてくるような感じがする。
朝食は麦入りごはんに味噌汁、薹菜のおひたし、煮豆、長岡菜の漬物。
昼食は、朝飯の残りがふつうだが、ときには焼きもちもつく。朝の残りの味噌汁、身欠きにしんのあぶり焼き、岩船かぶの当座漬のほかに、春らしく山うどに生味噌をつけて食べる。ときには、あさづきのなますも出る。
夕食は朝飯の残りであるが、なべに湯を煮たて、冷やごはんを入れ、温まるていどに一煮たちさせる。湯をこぼして、しばらく蒸らしてから食べる。味噌汁は朝の残りに水と味噌を入れて煮たてたもので、実がないようなものである。そのほか、身欠きにしん、たけのこ、ふきの煮しめなどがつく。

写真:春の朝食
上:折り菜のおひたし、煮豆/中:梅干し、長岡菜漬/下:麦飯、二度いもと折り菜の味噌汁

 

出典:本間伸夫 他編. 日本の食生活全集 15巻『聞き書 新潟の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.86-87

関連書籍詳細

日本の食生活全集15『聞き書 新潟の食事』

本間伸夫 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540850257
発行日:1985/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 378頁

「炊く」「蒸す」「搗く」「こねる」「焼く」。お米をさまざまに味わい分けてきた新潟県内を六つの食文化圏に分けて、それぞれの地域の豊饒を語ってもらう。
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