聞き書 福岡の食事 筑紫平野の食より
十月二十日ころが稲刈りはじめの鎌入れとなる。稲刈りは天気仕事なので、天気を見はからって、早朝でも夜でも刈る。ゆうべまで刈ってなかった田が、朝起きてみると稲刈りのすんでいることもしばしばで、「あっちは夜稲刈りさっしゃったばい」といい合う。
裏作の種播きの日を遅らせることはできないので、それまでになにがなんでもと、稲こぎも夜なべでがんばる。それでも、足踏脱穀機ができ、ずいぶん楽になった。田で脱穀し、籾をかますに入れて家に持ち帰り、むしろに広げて三日ほど干し、臼すりで玄米にする。精米は、水車や唐臼でする。
とり入れが終わる日を鎌上げという家もあるし、「今日はにわ仕上げがあるぜ、鶏ども殺い(し)とかな」という家もある。夜は鶏ごはんとがめ煮が食卓に上る。
稲刈りが終わると、琉球芋や秋じゃがを収穫し、大豆を収穫する。野菜類の貯蔵をし、干し柿、つけ柿、あおし柿などもつくる。晩秋蚕を置くこともあり、息つくひまもない。
写真:鎌上げのごちそう
上:おはぎ、寒漬/下:鶏ごはん、がめ煮
出典:中村正夫 他編. 日本の食生活全集 40巻『聞き書 福岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.115-117