聞き書 埼玉の食事 北足立台地の食より
夏に続いて、秋に収穫できる作物は豊富だから、相変わらずとりたての新鮮な材料で食事ができる。にんじん、ごぼう、里芋、八つ頭の新ものが食欲をそそり、そのうち新米も食べられる。農繁期でからだは疲れるが、朝から晩まで動きっぱなしなので、麦ごはんに味噌汁と漬物だけでも、食事がおいしくておいしくて、思いきり食べて働く。
■夜―麦ごはん、味噌汁、さばの味噌煮、なすときゅうりの押し漬
新米がとれると、新米入りの麦ごはんを炊く。新米でつくる麦ごはんはおいしい。それに、ねぎと油揚げの味噌汁。おかずにさばの味噌煮をすると家族みんなが喜ぶ。
秋深くなり少し肌寒い晩は、けんちん汁にする。けんちん汁には、豆腐のほか、里芋かじゃがいも、にんじん、ごぼう、大根、油揚げなどが入る。油揚げはふつうの家ではけんちん汁に入れないが、田中家では店にたくさんあるので必ず入れる。食べるときに七味とうがらしをふっていただく。これがまたからだを温めてくれることになる。
写真:秋の夜飯
上:さばの味噌煮、押し漬(なす、きゅうり)/下:麦ごはん、味噌汁(ねぎ、油揚げ)
出典:深井隆一 他編. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.172-174