聞き書 滋賀の食事 鯖街道朽木谷の食より
安曇川にはぎょうさん魚がいるので、子どもたちは学校から帰ると川で泳ぎながら魚を捕らえる。夜、川面に松明をかざすと、あゆがぴちぴちおどり寄るので手づかみする。大どれしたあゆは塩焼き、醤油煮にし、それでも余ると素焼きにしてつとにさし、いろりの天につるしておく。厳しい暑さのなかでの重労働であるが、新鮮な魚を食べて元気をとりもどす。
■昼飯――白飯、朝の味噌汁、青とうがらしの味噌煮、浅漬
夏のお菜は浅漬が一番。五月には昨年のぬか床を出し、新しいぬかを足してよく手入れする。夏大根やからしなの間引き菜を漬けていると味がよくなってくる。花つきのきゅうりを「初もの」とほめながら食べはじめるとたくさんなりだし、夏じゅう浅漬の材料にはこと欠かなくなる。浅漬の香りとさっぱりした歯ざわりが食を進める。山へ持って行くときにはぬかつきのままにして、谷川の水で洗って食べる。
弁当は白飯に塩ます、梅漬、おこうこを面桶(杉の薄板を曲げてつくる弁当箱)に詰め、麻糸で編んだ袋に入れ、腰にくくりつけて行く。
写真:山行きの弁当
面桶(めんつう)に詰めた弁当と、面桶をいれる麻袋
出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.273-274