ぴちぴちしたあゆで疲れたからだが生き返る――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年06月07日

聞き書 滋賀の食事 鯖街道朽木谷の食より

安曇川にはぎょうさん魚がいるので、子どもたちは学校から帰ると川で泳ぎながら魚を捕らえる。夜、川面に松明をかざすと、あゆがぴちぴちおどり寄るので手づかみする。大どれしたあゆは塩焼き、醤油煮にし、それでも余ると素焼きにしてつとにさし、いろりの天につるしておく。厳しい暑さのなかでの重労働であるが、新鮮な魚を食べて元気をとりもどす。
昼飯――白飯、朝の味噌汁、青とうがらしの味噌煮、浅漬
夏のお菜は浅漬が一番。五月には昨年のぬか床を出し、新しいぬかを足してよく手入れする。夏大根やからしなの間引き菜を漬けていると味がよくなってくる。花つきのきゅうりを「初もの」とほめながら食べはじめるとたくさんなりだし、夏じゅう浅漬の材料にはこと欠かなくなる。浅漬の香りとさっぱりした歯ざわりが食を進める。山へ持って行くときにはぬかつきのままにして、谷川の水で洗って食べる。
弁当は白飯に塩ます、梅漬、おこうこを面桶(杉の薄板を曲げてつくる弁当箱)に詰め、麻糸で編んだ袋に入れ、腰にくくりつけて行く。

写真:山行きの弁当
面桶(めんつう)に詰めた弁当と、面桶をいれる麻袋

 

出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.273-274

関連書籍詳細

日本の食生活全集25『聞き書 滋賀の食事』

橋本鉄男 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540910012
発行日:1991/6
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

日本最大の湖・琵琶湖には鯉・鮒・もろこなど淡水魚があふれる。ふなずしをはじめ、滋賀県特有の湖魚の食べ方をもらさず紹介。また、近江商人発祥の地に残る本宅(店に対する自宅)の食生活など話題がいっぱい。
田舎の本屋で購入

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