ほお葉ずし

連載日本の食生活全集

2023年06月09日

聞き書 岐阜の食事 恵那平坦(東野)の食より

六月ころでないとほお葉の香りがしないので、ほお葉ずしをつくるのは、六月の農休みのときなどである。たくさんつくって、田植えを手伝ってくれた人にふるまったりするが、ふつうの家ではあまりつくらない。
山へ行って、ほおの葉のなるべく大きなのをとってきて、洗って乾かしておく。
具は、かつおの味つき缶詰、へぼのつくだ煮、きゃらぶき、あさりのしぐれ煮、小さく切ったたけのこの煮つけ、紅しょうがなどを用意する。
ほお葉を表が上になるように置き、すし飯をのせ、その上に具をいろどりよく並べ、中身がはみ出さないようほお葉で包みこみ、竹の皮をさいたもので結ぶ。これをまないたの上に並べ、その上に別のまないたをのせ、さらに重石をのせて半日くらいおく。
ほおの葉ごと皿に盛って出す。すし飯にほおの葉の香りが移っておいしい。

写真:初夏のころがおいしいほお葉ずし

 

出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.121-121

関連書籍詳細

日本の食生活全集21『聞き書 岐阜の食事』

森基子 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540900044
発行日:1990/5
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

飛騨は山の恵み、美濃は川の恵み豊かな国。米と繭の国だが、雑穀や山菜、木の実も大切な食糧。味噌・漬物・どぶろくなど発酵食品がよく発達している。山・川の恵みを受けた八つの地区の暮らしと食を収録。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事