聞き書 岐阜の食事 恵那平坦(東野)の食より
六月ころでないとほお葉の香りがしないので、ほお葉ずしをつくるのは、六月の農休みのときなどである。たくさんつくって、田植えを手伝ってくれた人にふるまったりするが、ふつうの家ではあまりつくらない。
山へ行って、ほおの葉のなるべく大きなのをとってきて、洗って乾かしておく。
具は、かつおの味つき缶詰、へぼのつくだ煮、きゃらぶき、あさりのしぐれ煮、小さく切ったたけのこの煮つけ、紅しょうがなどを用意する。
ほお葉を表が上になるように置き、すし飯をのせ、その上に具をいろどりよく並べ、中身がはみ出さないようほお葉で包みこみ、竹の皮をさいたもので結ぶ。これをまないたの上に並べ、その上に別のまないたをのせ、さらに重石をのせて半日くらいおく。
ほおの葉ごと皿に盛って出す。すし飯にほおの葉の香りが移っておいしい。
写真:初夏のころがおいしいほお葉ずし
出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.121-121