聞き書 岩手の食事 県南の食より
八十八夜を迎えると、必ずよもぎもち(草もち)を搗く。この日は、朝から田や畑を起こしていた人たちも、昼飯をすませると、腰に竹で編んだはきごをさげて、よもぎ摘みに出る。できるだけ、白い毛のついている若い芽や葉を摘む。そうすると、すったときなめらかですじっぽさが全く気にならない、よいもちができる。
摘んだよもぎのごみをとり除き、ゆでて水にさらしてあくを抜き、水気をしぼって、すり鉢でよくすり、もちに搗き込む。このよもぎもちをまるめて、中に小豆あんを入れ、よもぎもちのまんじゅうができ上がると、隣りにも配ったりする。あんを入れずに、きな粉をまぶしても食べる。
また、もち米の粉とうるち米の粉を混ぜてつくることもある。割合は、五対五から七対三ぐらいである。粉は全部混ぜて熱湯でしとね、大きななべでゆで上げ、臼に入れて搗く。
よもぎは薬草でもあり、春先に食べるとからだによいのである。
出典:古沢典夫 他. 日本の食生活全集 3巻『聞き書 岩手の食事』. 農山漁村文化協会, 1984, p.208-209