野菜の端境期にうれしい野山の青もの――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2024年04月30日

聞き書 埼玉食事 北足立台地の食より

たくあんはちょうどおいしく漬かっているけれど、生の野菜は端境期なので、冬越しした山東白菜や葉先の枯れたねぎが大切な食材料だ。秋に貯蔵しておいたにんじんやごぼうも、春のはじめまではまだ使える。食べものはなるべく家でとれるもので間に合わせるが、このころは、身欠きにしんや桜えびなどを買って、それらをうまく利用する。
夜――つけうどん、精進揚げ、たくあん
忙しい毎日だが、手打ちうどんを打つ。たっぷりゆでて、おつゆに薬味(きざみねぎ、七味とうがらし)を添える。にんじん、ごぼう、さつまはてんぷらにし、かき揚げにはねぎと桜えびを使う。こんな材料でも結構なごちそうになる。あとは歯切れのいいたくあんがあれば上等。
また、山に出るたけのこをふきと一緒に煮ものにするときもある。いかにも春らしいおかずである。たけのこは、やわらかいところを味噌汁に入れたりもする。田のあぜのせりやみつばも野菜の少ないこの時期の貴重な青ものである。

写真:春の夜飯
つけうどん(おつゆ、薬味にねぎと七味とうがらし)、精進揚げ、たくあん

 

出典: 深井隆一 他編. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.164-166

関連書籍詳細

日本の食生活全集11『聞き書 埼玉の食事』

深井隆一 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN: 9784540910050
発行日: 1992/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 384頁

「あさまんじゅうに昼うどん」は物日におけるきまりもの。小麦、さつまいも、狭山茶、深谷ねぎ、岡部の大根など自慢の作物もいっぱい。街道のうまいもの、鋳物工場の給食まで収録。
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