聞き書 長崎の食事 五島の食より
■朝――いも飯からかんころ飯へ
節分から三十五日すぎたころ、かから(さるとりいばら)の葉が三枚出て大豆が三粒包まれるようになったら、大豆、ぼうぶら、小豆、あわ、落花生、野菜豆(さやいんげん)の種播き、えのいも植えをする。四月には麦のたたきあがり(収穫)、いもの苗つくりと続く。そして麦をたたく前につる豆(いんげんの一種)、きじ豆(五月豆)を播く。五月には田植え、草取りと休む間もなく農作業が続き、一年間で最も労働のはげしい季節となる。
春のはじめは、いも飯を食べるが、暖かくなって貯蔵しておいたいもが傷んでくると、かんころ飯にかわる。かんころ飯に、一割ほどの青い唐豆やえんどうを入れて炊くと子どもが大喜びする。麦とり(収穫)などの仕事のきついときは、麦飯に米を少し混ぜて炊き、力をつける。味噌汁には四月菜の干し葉と大根の丸干しを入れたり、めのはもときどき入れたりする。
かかが朝食の準備をしているとき、ちゃんは畑のぐるりの草切りに出かける。
写真:春の朝食
〔左から〕かんころ飯、大根の漬物、味噌汁(大根の切干し)
出典: 月川雅夫 他編. 日本の食生活全集 42巻『聞き書 長崎の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.217-219