聞き書 徳島の食事 吉野川北岸より
五目ずしのことで、一年中、紋日には必ずといっていいほどつくる。
米一升を洗って炊く。米酢一合に塩をさかずきに一杯、砂糖を茶わんに軽く一杯を混ぜる。砂糖はきざら(ざらめ)を使うので溶けにくいが、酢を温めたりすることはしない。ごはんがあつあつのうちに、はんぼ(半切り桶)に移して混ぜると、溶けてしまう。
ごはんが炊ける間に具を煮ておく。冬はえんどう豆、ささがきにしたごぼう、せん切りの油揚げ、いちょう切りした大根とにんじん、二つか四つに割った地いもの子いも、小口切りにしたずき(里芋の茎)などを、一緒に炊く。味つけは醤油だけで薄味にする。えんどう豆は、乾燥させてとっておいたものをもどして使う。
春は大根がなくなるので入れない。生のえんどう豆が出てくるので入れると色鮮やかなすしになる。夏はたけのこ、さや豆(三度豆のさやのこと)、なす、干し大根をもどしたもの、油揚げとずきを入れ、秋にはきのこ、なす、さや豆、油揚げを入れる。
これらの具をすし飯に混ぜ、皿に盛りつける。
写真:春のかき混ぜずし
出典:立石一 他編. 日本の食生活全集 36巻『聞き書 徳島の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.37-38