聞き書 岡山の食事 中国山地の食より
七夕には、「どじょうのてんてこ」という、かけ汁を食べる。どじょうを生きたまま油で炒めるので、激しくはねる音がするところから、「てんてこ」の名がついたという。夕立がある日は水が濁っているので、家々からみな、そうきを持ってわれ先にとどじょう踏みにいく。土手を踏み、出てきたどじょうをそうきで受けるのである。早く踏みにいったほうがよくとれる。
水をかえて泥をはかせたどじょうを油炒めして、音がしなくなったら水を入れ、煮たたせないで、短冊切りしたなす、ささがけごぼう、小口切りのずいきいもやずいき、はしでくずした豆腐を加えてよく煮る。きざんだいり干しと醤油を入れ、ざく切りのねぎを散らして味をととのえる。ことことと長く炊くほどおいしい。
ごはんに添えて食べたり、うどんをゆでて、どじょうのかけ汁をかけて食べる。
出典:鶴藤鹿忠 他. 日本の食生活全集 33巻『聞き書 岡山の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.297-298