あらめなの三杯酢

連載日本の食生活全集

2020年09月18日

聞き書 三重の食事 志摩海岸の食より

あらめなは、あらめを蒸して乾燥させたもの。
あらめは浅い海の岩につき、志摩の磯ではたくさんとれるから、暮らしを支える海草の一つだ。土用のころに口開けとなり、村中が総出で海へ行く。海女ははんぎりと鎌を持って海へ入り、海中の岩からあらめを鎌で刈りとる。刈りとったあらめは、はんぎりにのせて、浜へ押して帰る。沖に舟を出す人もいて、こぼれ落ちそうなほどあらめを積んで帰る。
家族の中で、あらめをとるもの、浜に干すものと役割を決めて、とってきたあらめはつぎつぎと浜に干す。干し場は杭で仕切って、各家ごとに分けられている。夏の日ざしを受けて浜いっぱいに干されるあらめは、志摩の風物詩でもある。あらめは表面が乾くと、一枚一枚裏返しにしてまた干す。乾燥したあらめは、集めて山積みにして保存する。
秋風が吹き、味噌仕込みがはじまると、蒸した大豆にはなをつける(こうじ菌をつける)が、このときに主婦は、蒸し屋さんに、あらめも一緒に蒸してもらう。加減よく蒸せたあらめは、家で細かく切ってから、むしろに広げて乾燥させる。これがあらめなで、袋に入れて保存する。あらめのままで出荷する家もあるが、これは志島であらめなに加工される。
水でもどしたあらめなをはんぎりに入れて、きゅうりの小口切りにすりごまを加え、三杯酢であえる。醤油は酢の半量が目安で、砂糖としょうがを適当に加える。とうがらしを入れる家もある。六月十三日の大念仏のときのあらめなの酢のものは大量につくるし、手でこねると汗が入ってきたないので、田打ち熊手のようなものでこねる。

 

出典:西村謙二 他. 日本の食生活全集 24巻『聞き書 三重の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.259-260

関連書籍詳細

日本の食生活全集24『聞き書 三重の食事』

西村謙二 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870019
発行日:1987/04
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 366頁

伊勢平野の世例祭、紀伊山間の山の神、伊賀のめし食い祭、志摩のお盆料理などの食べものをはじめ、伊勢神宮の神饌、お伊勢参りの食も紹介される。日常の食も豊富。
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