聞き書 滋賀の食事 湖南米どころの食より
秋になると、近くの野洲川に二尺あまりのあめのうがのぼってくる。これはますの一種で「びわます」のことだが、この時季はあめのうとよばれる。これをすくってとる。
子持ちのあめのうは卵を出さず、米の上へじかっぽに(じかに)のせ、醤油と酒を少し入れて炊く。炊きあがったら、あめのうの頭を持ちあげ、ぷるぷるとふると、身と卵だけが落ちて頭と骨だけが残る。この身と卵をごはんに混ぜ合わせる。ときにはねぎをきざんで入れると、輪切りのねぎの穴の中に卵が入り、食べるとこちこちしておいしい。川魚だからといって生ぐさみはない。
出典:橋本鉄男 他. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.87-88