聞き書 高知の食事 佐川盆地の食より
田貝ひろいは、秋の稲刈りのまっ最中、雨の日の女たちの楽しみである。田貝は、はる田にたくさんいる。稲を刈りながら、田貝がたくさんいる田を見つけておき、雨の日、人に先を越されないように、朝早くひろいにいく。
田のあちこちにころがっている田貝をひろい集めるのに時間はかからない。半日で、めぶりかご(目の粗いかご、めかご)いっぱいになる。ひろってきた田貝は、めぶりかごに入れて、川でゆすって泥を洗い落とす。大釜に湯をわかして田貝をゆで、これを桶にとって木の棒でつんつん突いて殻をつぶす。つぶれたものをそうけに入れて川でゆすると、身がとれる。
田貝はにんにくの葉と合いくち(相性)がよい。田貝がとれるころには、八朔に植えたにんにくの葉が食べられるようになる。これを切って田貝に入れ、醤油で煎りつける。酒のさかなに絶好である。
出典:松崎淳子 他. 日本の食生活全集 39巻『聞き書 高知の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.235-236