ていらぎの白あえ

連載日本の食生活全集

2021年02月17日

聞き書 山口の食事 長門山間の食より

小雪が舞い薄氷がはる谷川にも、二月下旬から三月初旬になると春は近づいている。木をこった(伐った)山からの帰りなど、谷川の清流の中でよくていらぎを見つける。まだ小さい。冷たい水を分けるようにして、ていらぎを摘む。
小ざる一杯のていらぎを熱湯でさっとゆでると、ほんの一にぎりほどになる。十分しぼった豆腐をすり鉢でよく当て、味噌と砂糖を少し加えてなめらかになったら、ていらぎをあえる。食卓に添えて、すぐそこまで来ている春をかみしめる。
日ざしが暖かくなるころにはていらぎも大きくなり、味噌汁の実やおひたしにたっぷりと使う。

 

出典:中山清次 他. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.136-137

関連書籍詳細

日本の食生活全集35『聞き書 山口の食事』

中山清次 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890017
発行日:1989/04
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 382頁

日本海、響灘、周防灘の三つの海に囲まれる山口県は、西日本の陸海交通の要衝。維新以来、歴史を動かしてきた地の人々の暮らしの呼吸と食べものを伝える。
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