聞き書 愛媛の食事 宇和島の食より
二月に入り、お社日に田の神を迎えると、ひな節句、灌仏会と続く。それぞれにふさわしい食べものを数日前から心がけてつくる。山菜、野草などを摘む季節でもあるので、よもぎやさんきら(さんきらい=さるとりいばら)の葉などもとってくる。麦刈り前には田んぼに仮小屋が建ち、芝居が来る。弁当を持って放楽に行く。でこ芝居(人形浄瑠璃)が来て、お軽勘平を楽しむ。
■ひな節句とひな遊び
ひな人形を飾り、あられ、白酒、着色したしん粉であんを包み、色つきのもち米を散らしてふかしたりんまん(いがもち)などを供える。磯に遊び(三日)、山に遊ぶ(四日)ために、子どもたちはそれぞれ節句用の弁当箱を持って出かける。仕立箱型の前おろしぶた、三段重ねである。上の箱には羊かんなどの菓子、中の箱には色とりどりのかまぼこなど、下の箱に巻きずしが入っている。
写真:さんきらの葉にのせただんご
丸いのがたんさんまんじゅう/左下:びりだんご/右下:しばもち
出典:森正史 他. 日本の食生活全集 38巻『聞き書 愛媛の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.54-54