聞き書 福岡の食事 筑紫平野の食より
「酢味噌」の代表的な料理で、ひなの節句には必ずつくる。せんぶぎと呼んでいるわけぎをゆでて、根のほうから何回か折り曲げて結ぶ。たにしをゆでて身をとり出し、きれいに洗ったものとわけぎを一緒に皿に盛り、酢味噌をかけて食べる。
ひなの節句ごろ、急に寒い日があると「たにし寒がん」という。このころ、たにしがよくとれるからだが、たにしがない場合には、もだま(ふかの尾を輪切りにしてゆでたもの)や、おばゆけ(くじらの皮下の白い脂)をさっと湯をくぐらせてつけ合わせることもある。
わけぎの緑と白があざやかで、春らしい一品である。
出典:中村正夫 他. 日本の食生活全集 40巻『聞き書 福岡の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.133-134