ぜんな飯

連載日本の食生活全集

2021年03月23日

聞き書 千葉の食事 九十九里海岸の食より

春、潮干狩りの季節になると霧が出るが、これを九十九里では「もやかぶり」といい、このころが貝の一番うまいときである。
ぜんなは、はまぐりの小さいものである。むき(両刃の小刀)でぜんなの貝柱を切り、身をとる。このとき出た汁はとっておく。
むき身をざるに入れ、砂がなくなるまでふり洗いをする。手でかきまわすと砂がとれない。
細く切ったにんじん、油揚げ、かんぴょうと、切りこんぶ、醤油、砂糖、ぜんなの身をむいたとき出た汁を入れて煮る。具が煮えたら、ぜんなのむき身を入れてさっと煮る。
白飯を炊いて、具を混ぜる。ぜんなのだしが出て、混ぜごはんのうちで一番うまい。ふだんの日の品変わりのごはんで、子どもらにとても喜ばれる。

写真:子どもらが喜ぶ、ぜんな飯

 

出典:高橋在久 他. 日本の食生活全集 12巻『聞き書 千葉の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.34-34

関連書籍詳細

日本の食生活全集12『聞き書 千葉の食事』

高橋在久 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890024
発行日:1989/06
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

黒潮が打ち寄せる房総半島は日本でも屈指の好漁場。いわし・かつおに代表される海の幸と利根川の魚、台地の作物が食膳にのぼる。太巻ずしはこの地の伝統食。女性が築いた食の営みを記録する。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事