聞き書 千葉の食事 九十九里海岸の食より
春、潮干狩りの季節になると霧が出るが、これを九十九里では「もやかぶり」といい、このころが貝の一番うまいときである。
ぜんなは、はまぐりの小さいものである。むき(両刃の小刀)でぜんなの貝柱を切り、身をとる。このとき出た汁はとっておく。
むき身をざるに入れ、砂がなくなるまでふり洗いをする。手でかきまわすと砂がとれない。
細く切ったにんじん、油揚げ、かんぴょうと、切りこんぶ、醤油、砂糖、ぜんなの身をむいたとき出た汁を入れて煮る。具が煮えたら、ぜんなのむき身を入れてさっと煮る。
白飯を炊いて、具を混ぜる。ぜんなのだしが出て、混ぜごはんのうちで一番うまい。ふだんの日の品変わりのごはんで、子どもらにとても喜ばれる。
写真:子どもらが喜ぶ、ぜんな飯
出典:高橋在久 他. 日本の食生活全集 12巻『聞き書 千葉の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.34-34