びす汁

連載日本の食生活全集

2021年04月15日

聞き書 高知の食事 佐川盆地の食より

びすは春先から夏にかけてとれる魚だが、あわ子(卵)を腹にかかえている春先のものがとくにおいしい。びす汁は日常も食べるが、花見遊山のごちそうに必ずつくる。
びすは「がら引き」という漁法でとる。さざえの殻を結びつけた綱を川下から川上に向かって川底をがらがら引き、音に驚いて逃げるびすを、びすとり専用のそうけ(ざる)の中へ追いこんでとる。
びす汁は、なべに湯をわかしておき、この中へびすをほうりこみ、煮えたら、ねじ干し大根を薄く切ったものと豆腐を入れ、醤油で味をつける。夏のびすは春より味は落ちるが、なすやねぎを入れて汁にすると、びすのだしが出ておいしい。

写真:びす汁(右)と五目ずし(左)
春先のびすは、あわ子を腹にかかえているのでおいしく、花見遊山には、びす汁を必ずつくる。五目などに添えて出す。

 

出典:松崎淳子 他. 日本の食生活全集 39巻『聞き書 高知の食事』. 農山漁村文化協会, 1986, p.235-235

関連書籍詳細

日本の食生活全集39『聞き書 高知の食事』

松崎淳子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540860256
発行日:1986/06
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

酢料理は日本一、豪快な皿鉢料理など土佐の伝統食は南国の香りがいっぱい。その他、山の民俗の宝庫といわれる高知山間の土の香りのする料理の数々を紹介する。
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