聞き書 愛知の食事 西三河(安城)の食より
夏は豊富な野菜を使っていろいろな料理をつくるが、なかでもきゅうりの酢もみ、なすの丸焼きがおいしい。ほかに、じゃがいも、かんらん(キャベツ)、なんば、ささげもよく食べる。
間食は、ういろう、だら焼き(うどん粉の流し焼き)、すいか、うり、トマト、さとの木などで、暑い盛りにほっと息をつく。
■朝飯と昼飯―田植えの田んぼ弁当
春と同様、弁当は朝と昼の分を、いちこに入れて田に持って行く。ごはんの上には、梅干しとしそをのせる。
田植えの時期が来ると、吉軒さんで塩ますを一尾買って、風通しのよい土間につるしておく。田植えがはじまると薄く切って焼き、田んぼ弁当のおかずにする。きつい労働に塩からいますはおいしく、骨までしゃぶる。
しそを炒めて砂糖と味噌で煮た鉄火味噌は、しその香りと味噌の甘い味が合わさって、弁当のおかずにちょうどよい。塩のきいたなすやきゅうりのぬか漬も添える。
田植えには日雇いの人を頼むことも多く、それぞれがみんな弁当持参で来る。このときばかりは忙しすぎて間食もない。
写真:田植えの田んぼ弁当
梅干しとしそをのせた麦飯、お茶を入れた茶樽、きゅうりのぬか漬と塩ます、右下はしそ入り鉄火味噌
出典:星永俊 他. 日本の食生活全集 23巻『聞き書 愛知の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.197-199