田植えの塩ますと豊かな夏野菜―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2021年05月21日

聞き書 愛知の食事 西三河(安城)の食より

夏は豊富な野菜を使っていろいろな料理をつくるが、なかでもきゅうりの酢もみ、なすの丸焼きがおいしい。ほかに、じゃがいも、かんらん(キャベツ)、なんば、ささげもよく食べる。
間食は、ういろう、だら焼き(うどん粉の流し焼き)、すいか、うり、トマト、さとの木などで、暑い盛りにほっと息をつく。
朝飯と昼飯―田植えの田んぼ弁当
春と同様、弁当は朝と昼の分を、いちこに入れて田に持って行く。ごはんの上には、梅干しとしそをのせる。
田植えの時期が来ると、吉軒さんで塩ますを一尾買って、風通しのよい土間につるしておく。田植えがはじまると薄く切って焼き、田んぼ弁当のおかずにする。きつい労働に塩からいますはおいしく、骨までしゃぶる。
しそを炒めて砂糖と味噌で煮た鉄火味噌は、しその香りと味噌の甘い味が合わさって、弁当のおかずにちょうどよい。塩のきいたなすやきゅうりのぬか漬も添える。
田植えには日雇いの人を頼むことも多く、それぞれがみんな弁当持参で来る。このときばかりは忙しすぎて間食もない。

写真:田植えの田んぼ弁当
梅干しとしそをのせた麦飯、お茶を入れた茶樽、きゅうりのぬか漬と塩ます、右下はしそ入り鉄火味噌

 

出典:星永俊 他. 日本の食生活全集 23巻『聞き書 愛知の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.197-199

関連書籍詳細

日本の食生活全集23『聞き書 愛知の食事』

星永俊 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890031
発行日:1989/08
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

海、山、川、田畑の幸豊かな愛知、味噌のルーツ豆味噌を生かす味噌料理の数々。尾張藩時代からの伝統ある食べものと、江戸、上方の味覚がおりなす多彩な食。
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