田植えは塩ますもつけて1日5食―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年05月20日

聞き書 岐阜の食事 飛騨白川の食より

田植え
田植えは一年のうちでも大切な行事である。それに米の飯を食べられるので張り合いもある。白川村には「結い」という制度があって、お互いに助けあって作業をする。とくに田植えは、早朝からはじめて一日で終わるように家族以外に人を頼む。
田かきや灰まき、苗配りは男が受け持ち、植え手は早乙女である。一日に一人で三畝がふつうで、赤いたすきがけに檜笠で、素足で田に入る。
結いの人たちは、朝食は各家ですませてから田植えする家に集まる。
九時ごろのまえびり(前昼)は田の近くで食べる。まめご(きな粉)をまぶしたほお葉飯か、にぎり飯に漬物ぐらいで、むしろの上に座り、ひと休みするだけの簡単な食事である。
昼食は一一時ごろで、家へ上がって食べる。米の飯、味噌汁、漬物、山菜の煮しめなどの皿盛りである。わらび、ぜんまい、くぐみ(こごみ)、ふきなどをゆでて乾燥してあるので、それらをもどしてあく抜きし、たまりで味つけして煮しめて出す。山の熊笹のたけのこをゆでて皮をむき、煮しめて出すこともある。
三時ごろには、こびり(小昼)といって、まえびりと同様のものを田で食べる。
夕方は、結いの人たちに気をつかって早めに仕事をきりあげ、五時すぎには風呂に入って着物を替え、さっぱりしてから夕食の膳についてもらう。米の飯、焼いた塩ます、大豆と大根干しの煮もの、ささげ豆の煮もの(塩味)、豆腐汁などをつける。もちろん酒も出す。ゆでたささげ(さや)をあぶらえであえて出すこともある。ひどんぼ(うるめいわしの背割りの干もの)を田植え魚に出す家もある。

写真:田植えどきの夕食
膳内:ささげ豆の煮もの、焼いた塩ます、大豆と大根干しの煮もの、白飯、豆腐汁/膳外:長漬、酒

 

出典:森基子 他. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.70-71

関連書籍詳細

日本の食生活全集21『聞き書 岐阜の食事』

森基子 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540900044
発行日:1990/05
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

飛騨は山の恵み、美濃は川の恵み豊かな国。米と繭の国だが、雑穀や山菜、木の実も大切な食糧。味噌・漬物・どぶろくなど発酵食品がよく発達している。山・川の恵みを受けた八つの地区の暮らしと食を収録。
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