聞き書 奈良の食事 大和高原の食より
■昼――こうたけ飯またはまつたけ飯、塩きすの焼き魚、里芋と甘藍の煮もの、日野菜漬
十月に入り、祭り前後になると、こうたけ、まつたけ、しめじ、しいたけなどのきのこが裏山でたくさんあがる。野良仕事の合間をぬって、きのことりにも行き、こうたけ飯、まつたけ飯、しめじ飯などのごはんや、汁もの、焼きものにして食べる。秋の味覚が食卓にのぼり、いちだんとにぎやかになる。
秋は野菜もまた多く収穫できる。日野菜、小松菜、しゃくしななどの菜っぱ類は油炒めや煮もの、おひたしにして食べたり、一部は秋じまいのころ、おくもじにして春まで長く食べる。
甘藍は三杯酢にしたり、里芋や夏にとれたじゃがいも、かぼちゃ、つる豆などと一緒に煮ものにしてむだなく食べるように心がける。
切り方をさまざまに変えた干し大根や、干しずいきが軒下に下がるのもこの季節である。
魚はこのころ、塩きすが食べられる。
写真:秋の昼飯
上:里芋と甘藍の煮もの、日野菜漬/中:お茶/下:こうたけ飯、塩きすの焼き魚
出典:藤本幸平 他編. 日本の食生活全集 29巻『聞き書 奈良の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.140-141