お盆はもろこいえで精進落とし―晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年08月12日

聞き書 鹿児島の食事 鹿児島市(商家)の食より

八月十三~十五日はお盆。十五日は店も休みになる。
お盆には家族そろってお墓まいりをする。お墓には提灯を下げるが、初盆のときは提灯の数が多い。お盆にも正月と同様に親せき回りをし、線香、ろうそく、マッチを仏前に供えておまいりする。客を迎えると、ごま豆腐、カルピス、それに、きんかん豆腐(がんもどき)や高野豆腐を煮つけたものを出してもてなす。お経をあげにいらしたお坊さんにも、カルピスと果物を出す。おっさんや萩乃さんにとっては、お正月についで忙しい行事である。
仏前には、十三日の晩から十五日までの三日間、だごに小豆あんをかけたものと、果物、型菓子(米粉と砂糖を固めた菓子)を供える。お盆の迎え火、送り火はしない。
十三日、十四日の食事は精進で、特別なごちそうはつくらないが、ごま豆腐、いもんころばかし(里芋の煮ころがし)、炒り豆腐、きんかん豆腐、そうめんなどを食べる。
十五日も精進であるが、春田家では、両親そろっているあいだは、十五日の夕食には精進料理の膳にたいの塩焼きを一皿加えて、もろこいえ(祝い)といって精進落としとする。このときの膳には、大豆や野菜を入れた「かっのこんおっけ」と呼ばれる汁を必ずつける。

写真:もろこいえの膳
上:〔左から〕盛りつけ(高野豆腐、ごぼう、しいたけなどの煮ものと、てんぷら)、たいの塩焼き/中:といもがらの酢のもの、ごま豆腐、あんだご/下:かっのこんおっけ、いもんころばかし、炒り豆腐/膳外はそうめん汁

 

出典:岡正 他. 日本の食生活全集 46巻『聞き書 鹿児島の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.28-29

関連書籍詳細

日本の食生活全集46『聞き書 鹿児島の食事』

岡正 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540890055
発行日:1989/12
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

鹿児島は南方食文化の北端。いも・鶏・糸瓜・豚の調理に南方の食習慣が息づく。海上の味=ヤポネシア構想の主舞台の陽光あふれる南国の味。
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