きゅうりの塩漬

連載日本の食生活全集

2021年09月03日

聞き書 岩手の食事 県央の食より

きゅうりは、七月の中ごろから八月末にかけてたくさんとれる。とれた順に漬けておき、漬かりしだい、一つの桶に合わせて漬け込んでいく。これを囲い漬ともいっている。
きゅうりを洗い、ざるにあげて水をよく切ったあと、桶にすき間のないように並べる。塩は一斗桶に五合くらいの割合で加える。からかね(銅)なべに塩と水を入れて煮立て、熱い塩水をきゅうりにかける。その上に重石をのせる。漬け汁が上がってきたら、重石を軽くする。
遅播きのきゅうりがとれたら、別の桶に同じように漬け、よく漬かってから、先に漬けた桶に加える。
きゅうりの漬け汁は、寒くなるまでときどき煮立てなおしてかけると、酸っぱくならずに長もちするので、めんどうがらずに漬けかえをする。熱い汁をかけると色よく漬かり、ぱりぱりと歯ざわりがよい。「からかねなべで煮立てた塩水を入れると、いつまでも色がきれいだが、味が少し悪くなるような気がする」ともいう。
このきゅうりの漬け汁が多い場合は、すてないで玉菜を漬けるのに使う。そうすると、塩がよどまる(節約できる)。

写真:夏から秋にかけての漬物
(手前中央から左回りに)大根の切り漬、たくあん、大根の味噌漬(三年味噌)、うりのかす漬、きゅうりの塩漬、玉菜の塩漬け、なすのからし漬

 

出典:古沢典夫 他. 日本の食生活全集 3巻『聞き書 岩手の食事』. 農山漁村文化協会, 1984, p.172-172

関連書籍詳細

日本の食生活全集3『聞き書 岩手の食事』

古沢典夫 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540840227
発行日:1984/9
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 376頁

県北の雑穀文化圏・県央の粉食文化圏・県南のもち文化圏・海の幸豊かな三陸沿岸・山の幸の奥羽山系の5地域に分け、地域毎に紹介。日本人の食の原型を見ることができる。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事