聞き書 岩手の食事 県央の食より
きゅうりは、七月の中ごろから八月末にかけてたくさんとれる。とれた順に漬けておき、漬かりしだい、一つの桶に合わせて漬け込んでいく。これを囲い漬ともいっている。
きゅうりを洗い、ざるにあげて水をよく切ったあと、桶にすき間のないように並べる。塩は一斗桶に五合くらいの割合で加える。からかね(銅)なべに塩と水を入れて煮立て、熱い塩水をきゅうりにかける。その上に重石をのせる。漬け汁が上がってきたら、重石を軽くする。
遅播きのきゅうりがとれたら、別の桶に同じように漬け、よく漬かってから、先に漬けた桶に加える。
きゅうりの漬け汁は、寒くなるまでときどき煮立てなおしてかけると、酸っぱくならずに長もちするので、めんどうがらずに漬けかえをする。熱い汁をかけると色よく漬かり、ぱりぱりと歯ざわりがよい。「からかねなべで煮立てた塩水を入れると、いつまでも色がきれいだが、味が少し悪くなるような気がする」ともいう。
このきゅうりの漬け汁が多い場合は、すてないで玉菜を漬けるのに使う。そうすると、塩がよどまる(節約できる)。
写真:夏から秋にかけての漬物
(手前中央から左回りに)大根の切り漬、たくあん、大根の味噌漬(三年味噌)、うりのかす漬、きゅうりの塩漬、玉菜の塩漬け、なすのからし漬
出典:古沢典夫 他. 日本の食生活全集 3巻『聞き書 岩手の食事』. 農山漁村文化協会, 1984, p.172-172