正月を出世魚のぶりと白もちで祝う─晴れ食・行事食

連載日本の食生活全集

2021年12月23日

聞き書 広島の食事 中部台地の食より

正月
元日は早く起き、家族そろって神社におまいりに出かける。神官に年玉を持って行く人もある。また、お寺にも年玉を持っておまいりに行く人もいる。
正月三が日は、毎朝、ぶり雑煮で祝う。平もちをゆで、ぶりの切身の入った澄まし汁をかける。ゆでるとき、大なべの底に竹ざるを敷くと、もちがなべ底につかない。澄まし汁には、ぶりのほかに里芋、にんじん、大根、油揚げ、ごぼう、こんぶを入れる。
はまぐりを入れたはまぐり雑煮をつくる家もある。また、ぶりやはまぐりを使わず、豆腐とかまぼこ、それに野菜の澄まし汁にし、もちの上に花がつおをかける家もある。
きな粉もちは昼ごろ食べる。年始の客や遊びに来る子どもたちにも、きな粉もちで接待する。ゆでた平もちに、砂糖と塩を入れたきな粉をまぶす。きな粉はきな粉用に栽培した青大豆をひいてつくるから、きめは粗いが香りはよい。色もうぐいす色で美しい。
数の子、はまぐり、きんぴらごぼう、なます、こんにゃくの白あえ、煮豆、こぶ巻き、煮しめなどをたくさんつくり、いれこ(きりだめ)に詰めておき、年始の客をもてなす。

写真:ぶり雑煮
正月三が日は毎朝食べる。

 

出典:神田三亀男 他編. 日本の食生活全集 34巻『聞き書 広島の食事』. 農山漁村文化協会, 1987, p.111-113

関連書籍詳細

日本の食生活全集34『聞き書 広島の食事』

神田三亀男 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540870668
発行日:1987/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 382頁

"耕して天に至る"瀬戸内の島の味の基本はひしお味噌、広島湾のかきには「いろは48種」の料理。備北山地では日本海のわにが、芸北山間では石州からの魚が食卓を飾る。
田舎の本屋で購入

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