寒い夜にはけんちん汁や酒粕汁で―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年01月12日

聞き書 山形の食事 県南置賜の食より

夕―白飯、汁もの、煮魚か焼き魚、煮もの、漬物
夕食には必ず魚と煮ものを使い、お膳をにぎやかにする。夜のごはんは毎日二升ずつ炊く。
魚は、たら、さめ焼き(皮をはいださめを焼いたもの)、塩引き(塩鮭、塩ます)などを買い求める。煮魚にするか焼き魚にするかは、そのときによって、一家をきりもりしているあねさま(主婦)が決める。若衆には、大きいのをお膳につけてやらねばならない。あねさまはいつもそのくらいの気をつかい、おもな働き手になってくれる若衆を大事にする。
煮ものは、二度いも、ごぼう、にんじん、こんにゃくなどを小魚のだしで煮しめたものや、くきな煮である。また、大根とともに生いかを煮たごちそうも食欲を増すお菜である。
味噌汁の実は、豆腐や味のよいごぼうに油揚げ、二度いもと油揚げなどがよく使われる。また寒中の寒い夜のけんちん汁や酒粕汁には、手のこんだ実がたくさん入っている。
冬の夜は、ごはんのあと夜わりをするので、夜食を用意する。女衆は膳の後始末を終えると、翌朝のごはんと夜食の準備、それに機織りの夜わりがある。
夜食は、かぼちゃ煮、大根煮、小豆かぼちゃ、ときには干し柿、栗ゆでなどを用意する。

写真:冬の夕食
上:くきな煮、塩引きの焼いたもの/中:たくあん/下:白飯、大根の粕汁(大根、油揚げ)

 

出典:木村正太郎 他編. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.155-157

関連書籍詳細

日本の食生活全集6『聞き書 山形の食事』

木村正太郎 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540880445
発行日:1988/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

山形の「母なる川」最上川が結ぶ置賜盆地、村山の平野と山間、県北の最上、庄内平野。暮らしの柱にある米と結びついた山と海の幸のすべてを紹介。加えて、羽黒山修験道の食、酒田海船問屋の食を再現。
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