聞き書 山形の食事 県南置賜の食より
■夕―白飯、汁もの、煮魚か焼き魚、煮もの、漬物
夕食には必ず魚と煮ものを使い、お膳をにぎやかにする。夜のごはんは毎日二升ずつ炊く。
魚は、たら、さめ焼き(皮をはいださめを焼いたもの)、塩引き(塩鮭、塩ます)などを買い求める。煮魚にするか焼き魚にするかは、そのときによって、一家をきりもりしているあねさま(主婦)が決める。若衆には、大きいのをお膳につけてやらねばならない。あねさまはいつもそのくらいの気をつかい、おもな働き手になってくれる若衆を大事にする。
煮ものは、二度いも、ごぼう、にんじん、こんにゃくなどを小魚のだしで煮しめたものや、くきな煮である。また、大根とともに生いかを煮たごちそうも食欲を増すお菜である。
味噌汁の実は、豆腐や味のよいごぼうに油揚げ、二度いもと油揚げなどがよく使われる。また寒中の寒い夜のけんちん汁や酒粕汁には、手のこんだ実がたくさん入っている。
冬の夜は、ごはんのあと夜わりをするので、夜食を用意する。女衆は膳の後始末を終えると、翌朝のごはんと夜食の準備、それに機織りの夜わりがある。
夜食は、かぼちゃ煮、大根煮、小豆かぼちゃ、ときには干し柿、栗ゆでなどを用意する。
写真:冬の夕食
上:くきな煮、塩引きの焼いたもの/中:たくあん/下:白飯、大根の粕汁(大根、油揚げ)
出典:木村正太郎 他編. 日本の食生活全集 6巻『聞き書 山形の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.155-157