寒い冬にはどじょうむぐりで温かく―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年01月13日

聞き書 栃木の食事 両毛山地(葛生)の食より

寒さが身にしみるようになるまでに、大事ないも類、にんじん、ごぼう、大根などの野菜を、屋敷のまわりに穴を掘って蓄えておく。干したいもがら、大根の干葉もできあがり、とくに寒い日を選んで、凍みたいさいもつくってある。冬の食事は、これらの貯蔵したものが主となる。
夜―どじょうむぐり
仙波に住む野部家は一四人家族だが、米は一年間、家族全員が食べるだけの量はとれない。そこで、なんとか食いのばすために、米を食べすぎないよう、あらかじめ米と麦を混ぜて一緒に米びつに入れておく。麦はつぶし麦か、割り麦にする。こうしておくと、毎回、米と麦を別々に枡で量るよりも、米を長くとっておける。
それでも足りない分は、買わなければならない。その買う分を少しでも減らすために、そばをよく打つ。これも、量を増やすために大根をついて(細く切って)そばとともにゆで、ねぎとにんじんを入れた煮干しだしの醤油の汁につけて食べる。
ときには、太いうどんを打って、ゆでずにそのまま、大なべにつくっておいた汁の中に入れて煮たどじょうむぐり(煮こみ)にする。太いうどんが、まるでどじょうのように見えるので、この名がついたらしい。汁はふつう味噌味だが、ときには醤油の汁にする。実は、ねぎとたいさいである。

写真:たいさい、ねぎを入れた、どじょうむぐり

 

出典:君塚正義 他編. 日本の食生活全集 9巻『聞き書 栃木の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.288-290

関連書籍詳細

日本の食生活全集9『聞き書 栃木の食事』

君塚正義 他編
定価3,038円 (税込)
ISBN:9784540880322
発行日:1988/8
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5 384頁

鮭食の伝統「しもつかれ」、伝統行事に食の歴史をとどめる栃木の食。海なし県栃木で多用される川魚、里芋。山と川と里の国栃木の習俗、行事、暮らし、食の姿を伝える。
田舎の本屋で購入

このカテゴリーの記事 - 日本の食生活全集
おすすめの記事