聞き書 岐阜の食事 古川盆地(国府)の食より
雁の模様が浮かび出た鉄製のかり焼きせんべいの型をおきで熱し、たね油をぼろ布にしみこませてよくふく。白もちを二枚にそぎ、さらに四つに切り、焼き型にはさんで両面を焼く。小さなもちが大きくふくらんで香ばしく焼きあがる。
年寄りたちは、冬の夜長をひなた(いろり)で暖をとりながら、ときどき手を動かして、正月用や、冬の夜のお説教を聞く催しの招待のおりの茶菓子にと、焼き続ける。湿気を帯びないよう缶に入れて保存する。
うどん粉に赤砂糖を混ぜて練り、この型で焼いてせんべいにすることもある。
写真:寒いときのおやつ、かり焼き
出典:森基子 他編. 日本の食生活全集 21巻『聞き書 岐阜の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.38-39