聞き書 山口の食事 城下町萩の食より
■端午の節句
五月五日の端午の節句には、かしわもちやちまきをかごいっぱいにこしらえる。残ったかしわもちは涼しい軒下につるし、ちまきは五、六本ずつ束ねて、涼しい部屋の天井につるす。そして、固くなると湯につけてもどして食べる。
初端午は、質素倹約を家訓とするこのあたりの家でも、盛大に祝う。嫁の里からは立派なよろい、かぶとの床飾りと紅白の一升もちが届けられる。大勢の客ごとになるので、近所からも手伝いがきて酒やさかなでにぎやかに祝う。
ごちそうは、たいの刺身に尾頭つきの吸いもの、うに、やまいものおろし、てんぷら、のっぺい、はちくとあごのすり身だんごの煮ものわん、いとこ煮、押しずし、あごのすり流し味噌汁などである。端午には必ずあごとはちくを用いる。あごのように威勢よく、はちくのようにすくすく育つようにとの願いがこめられている。
引き出ものはかまぶこ、紅白もち、かしわもち、ちまき、赤飯である。
写真:端午の節句のかしわもち
白もちとよもぎ入りをいぎの葉ではさんで蒸す。
出典:中山清次 他編. 日本の食生活全集 35巻『聞き書 山口の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.287-289