聞き書 茨城の食事 県央畑作地帯の食より
田植え。畑作地帯でも、田植えは重要な行事の一つである。主婦は田植えの日のまかないのため、前の日から手伝いの人々の食事の準備に大わらわになる。近所の雑貨屋で身欠きにしん、かんぴょうなどを買いこみ、豆腐屋にいってがんもどきや豆腐も買う。
田植えの日の朝、主婦は暗いうちに起きて朝食の準備をし、それから手伝いの人々の昼食やこじゅはんの準備にかかる。前夜ひやしたもち米は赤飯にふかし、おにぎりにする。身欠きにしんや、かつおの煮つけを必ずつくる。
四食分(一〇時、二時、四時、夕飯)のおかずにするのに、たくさん煮ものを煮る。小女子と真竹の煮つけ、かんぴょう、こんにゃく、油揚げ、がんもどきも煮つけるし、かきするめ(するめいかを切りこぶのようにきざんだもの)も炒る。
夕食には白米飯を炊く。ぼたもちをつくることもある。手伝いの男衆には酒をふるまう。さかなに、かつおの刺身を出す。
写真:田植えの食事
上:じゃがいも、ふき、切干し大根の煮つけ/重箱の中:ながいも、身欠きにしん、にんじん、大根、ごぼうの煮つけ/右:きんぴら(ごぼう、にんじん)
出典:桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.24-27