聞き書 埼玉の食事 大里・児玉の食より
野菜を主体とした精進揚げである。農家にとってのごちそうで、農繁期や養蚕期の一区切りのときとか、人寄せのあるときくらいしかつくらない。
盆にはてんぷらは欠かせない料理で、なすをはじめ、いんげん、かぼちゃ、みょうがなどの夏野菜をいろいろにとり合わせる。早掘りのさつまいもも出るので使うが、まだ仏さまにあげるていどにしか掘らない。たいていの農家が、まだたまねぎはつくっていないが、買えばある。たまねぎをてんぷらにして出すとみんなが珍しがる。
桜えびを買ったときは、ねぎと一緒にかき揚げにして出すと喜ばれる。また、ごぼうやにんじんのある時期には、ごぼうとにんじんのかき揚げもつくる。
写真:夏野菜のてんぷら
出典:深井隆一 他編. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.97-97