聞き書 佐賀の食事 玄界灘沿岸の食より
■夕飯―昼の麦飯、かんころ飯、冷や汁、小あじのせごし、ゆでなす
のど越しのよい冷や汁は、食欲がないときでもついおかわりしてしまう。じいやんが釣ってくるほり(べら)の身を焼いてほぐし、するめ、きゅうり、しそを入れ、味噌味をつけて井戸水でのばしたものである。とりたての小あじのせごしはいつも食べるものだが、刺身づくりは男の仕事で、じいやんがすぐつくってくれる。夕飯のかんころ飯には、ふたなりの新豆を入れるとひと味違ってくる。
夕方の牛迎えは年中子どもの仕事である。小学二年にもなれば、牛のお尻をちょっとたたけば岬まで連れてゆけるし、夕方はどこの子も牛とかちなって(連れだって)帰ってくる。種付けをすると、まやに暦を貼り、みんなで出産を待ちわびる。波戸では、子持たせ牛として現金収入につなげる。波戸の牛は磯を歩くので爪が強いため、佐志村に牛市が立つと、よか牛として高値に売れる。
写真:夏の夕飯
上:ゆでなす、あじのせごし/中:せごしをつける酢ぬた/下:麦飯、冷や汁/じいやんにはお酒を一杯添えて。
出典:原田角郎 他編. 日本の食生活全集 41巻『聞き書 佐賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.162-163