聞き書 埼玉の食事 北足立台地の食より
田中家ではいろいろな夏野菜をつくっているので、つぎからつぎへと新鮮なものを食卓に出せる。野菜のおかずには苦労をしない。それに冷ややっこがいつも食べられるので、涼しさを呼ぶおかずづくりは楽なもの。
■昼―朝の残りのごはんと味噌汁、冷ややっこ、きゅうりもみ、ぬか漬
きゅうりもみは、きゅうりを薄い輪切りにし、塩をしてしんなりさせ、しその葉を細かく切って入れたごま味噌だれであえて食べる。いんげんのごまよごしも力がつくような気がする。きゅうりもみやごまよごしに使うごま味噌だれは手がかかるので、日常の忙しい食事のしたくのときはなかなかつくっていられないのだが、一番ごや二番ご、麦刈りとからだを使い、暑さで体力も弱っているときなので、がんばってつくる。
おろししょうがで冷ややっこを食べるときは、豆腐の味がよくわかる。家族はみな父ちゃんの働きぶりを自分の舌で味わうという気分である。
写真:夏の昼飯
上:冷ややっこ(おろししょうが、醤油)、ぬか漬(きゅうり、なす)/下:麦ごはん、じゃがいもの味噌汁
出典:深井隆一 他編. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.168-169