聞き書 石川の食事 加賀潟(河北潟)の食より
池野さんの家では、北中条(隣りの集落)まで行って畑をつくっているが、きゅうり、なす、かたうり(しろうり)など、ふだんの食事に欠かせないものは屋敷まわりの菜園田(野菜用の田)でつくるので、毎日必要なときにとってきて食卓にのせることができる。
潟端の人たちは夏になると、雨が降ったあと、あらかじめ川や潟ぶちに沈めておいたうい(竹かごの筒)にかかっている、どじょうやごりをとりに出かける。また、ふなは長い竹の先にとりつけた前がけ(網)で手ぎわよくすくいとる。大人に習って子どもたちも上手に魚をとる。前がけの中にはふなのほか、どじょう、ごり、川えびなども混じって入っており、それぞれ種類ごとに分けてみんなに配る。しじみ貝もとれる。
またお盆のころには、夜七時か八時ごろになると、男たちが裸になって川や潟に入り、「うがい」をする。これは、口のつぼんだ大きな竹かごを川や潟の底に沈めておいて、男たちが輪になってまわりから魚を竹かごに追いこむ漁法である。うがいでは、ふなやぼらの幼魚であるちょぼやにさいのほか、ときには、ぼらなどもとれる。家にいても暑いので、川や潟の中に入っての魚とりは、水浴を兼ねての夏の楽しみの一つである。
■昼食―白飯、じゃがいもの味噌汁、ごりのつくだ煮、きゅうりのあんかけ、漬物
暑さで食がすすまないときは、かたうりやきゅうりのあんかけをつくる。あんかけのあんは、じゃがいもをすりおろしてつくることもあるが、かたくり粉でつくることが多い。冷たくなってもおいしいし、のどごしがなめらかで食欲を増すので、家族みんなに喜ばれる。これになすときゅうりの色鮮やかな漬物が、いっそう食欲をそそる。
写真:夏の昼食
上:〔左から〕漬物、きゅうりのあんかけ/中:ごりのつくだ煮/下:白飯、味噌汁(じゃがいも)
出典:守田良子 他編. 日本の食生活全集 17巻『聞き書 石川の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.190-192