聞き書 茨城の食事 鹿島灘沿岸の食より
すずきは、網でも釣りでもとる。一番うまいのは夏の盛り。しかし、すずきくらいしゅんのこまかい(しゅんのあいだでも味にばらつきがある)魚は、あまりいない。一番うまい時期はごく短くて、秋風が立ちはじめるとどんどんやせていく。
すずきは、刺身にして食べることが多いが、炭火焼きもうまい。ぶつ切りにして焼く。炭火にかけると脂がじぶじぶ燃えて、ぼさぼさっと落ちる。火はまっ赤になる。
脂が炭火に落ちて燃えると、その炎が魚のうまさを閉じこめるから、味がよくなる。多少はこげてもかまわない。
出典:桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.257-258