聞き書 東京の食事 水郷・葛飾の食より
夏の農作業は、田植えにはじまり、キャベツ、きゅうり、なすなどの収穫と出荷、ねぎの定植、枝豆の出荷、山東菜や大根の種播きと続く。
夏は野菜が豊富にとれるので、市場に出したあとに残った野菜を利用して、さまざまな料理をつくる。汁ものにもたくさんの野菜を入れる。
味つけは、砂糖と醤油のほかに味噌をよく使う。油で炒めて味噌で煮こんだり、ごま味噌あえにする。油は、あぶらなの種を店に持って行き、しぼってもらったものを使う。
ごはんは、麦を入れると腐りやすいので、夏だけは白米飯である。
■昼―白米飯、なすのしん焼き、かぼちゃの煮もの、大根の梅酢漬
白米飯にすることが多いが、ときにはうどんやそばを食べることもある。おかずには、なすのしん焼き、ちりめんかぼちゃの煮ものなどをよくつくる。それに、大根の梅酢漬がさっぱりしていてよく合う。
そのほか、新鮮なきゅうりできゅうりもみをしたり、キャベツの酢のものをつくることもある。夏はちょっと酢を使ったものがあると、疲れがとれるような気がする。
ときには、冷ややっこにおろししょうがを添えて暑さをしのぐこともある。けれども冷ややっこは、つましい日常の食事には、そうたびたび出るものではない。たまに豆腐を買い、みんなで分けて食べる。
写真:夏の昼飯
上:かぼちゃの煮もの、大根の梅酢漬/下:白米飯、なすのしん焼き
出典:渡辺善次郎 他編. 日本の食生活全集 13巻『聞き書 東京の食事』. 農山漁村文化協会, 1988, p.164-166