聞き書 岡山の食事 瀬戸内沿岸・島しょの食より
旧暦八月一日の八朔には八朔だんごをつくる。奉公人の追い出しだんごなどといい、作男や子守りの交代日である。
同じ町内でも牛窓港近辺の村では、八朔にひな祭りをするところがある。初びなの家では「ししこま」という米粉の練りもの細工をつくる。ただ米(うるち米)の粉を水で練り、蒸すかゆでるかした後、臼で搗く。これに紅、緑、黄の色粉を練りこみ、たい、たこ、いか、みょうが、なす、なんきんなど、さまざまな形のものをつくる。子どもたちは初びなの家へししこまを借りにいく。女の子が生まれたとき、同じものをつくって返すという意味で「借りにいく」といわれるが、実はもらってきて二、三日のうちに焼いて食べる。子どもの厄を分けてとってもらう意味がある。
写真:ししこま
出典:鶴藤鹿忠 他編. 日本の食生活全集 33巻『聞き書 岡山の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.37-38