聞き書 埼玉の食事 東部低地の食より
九月の早生豆のまめぶち(豆打ち)のあと雨が降ると、寄せ残しに庭の大豆がふやけて大きくなって目立つ。それをひろってつくるのが、とれ秋に一番早くつくる呉汁。その後は一夜ひやした大豆を使う。
よくしぼったふきんの上にあたり鉢(すり鉢)をのせ、ひやした豆を気長にすって呉をつくる。あたり鉢が動かないように、子どもたちが鉢の端を持つこともある。
とうなすやねぎ、大根、にんじん、里芋を切って油で炒め、湯をさして味噌汁をつくる。その中に、できた呉を入れて煮る。呉が吹きこぼれないように、先に味噌で味つけをしておく。二つかみくらい豆のまま汁の中に入れると、豆の歯ごたえがあっておいしい。
出典:深井隆一 他編. 日本の食生活全集 11巻『聞き書 埼玉の食事』. 農山漁村文化協会, 1992, p.231-231