聞き書 岡山の食事 吉備高原の食より
「祭りは、さば、たこ祭り」といい、さばとたこがつきものである。
秋祭りには箱入りの塩さばを買う。一箱に一〇~一二ひきくらい入っている。
「まま食って寝るのが、さばのすし」といわれるように、腹いっぱい飯を詰める。
塩さばを一ぴきずつとり出して大きな器に入れ、一日、二日水につけて塩出しする。この水はすてずに、その中で背骨、中骨、目玉、背びれ、胸びれなどを、はさみと毛抜きを使ってきれいにとる。頭はそのままつけておく。大きな器にこぶを広げておき、洗って水気をふいたさばをのせ、酢を加えて酢漬にする。ときどきひっくり返す(二、三日)。
米はふつうのすし飯より心もちやわらかめに炊きあげ、熱いうちに合わせ酢をかけて完全に冷ます。
ごはんが冷めたころ、さばを酢から引き上げ、酢をふきとっておく。酢を打ったまな板の上にさばをのせ、手に十分酢水(酢と水と半々に合わせたもの)をつけて酢飯を長四角にととのえ、さばが生きているような姿に押しこむ。腹の切り目からごはんが見えるくらい詰める。さばが一まわり大きくなったように仕あげる。真竹の皮に包んで二か所しばる。すし桶にきっちり並べ、空間があれば詰め飯をする。軽い押しをして落ち着かせる。二、三日でなれておいしくなる。
祭り客には一寸ぐらいの厚さに切って皿に盛り、すすめる。
出典:鶴藤鹿忠 他編. 日本の食生活全集 33巻『聞き書 岡山の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.221-221