きのこ汁とさんまの味噌漬―日常の食生活

連載日本の食生活全集

2022年11月18日

聞き書 茨城の食事 北部山間地帯の食より


朝食は麦飯、味噌汁、漬物。ときには麦飯に大根、里芋、さつまいもを入れ、大根飯、いも飯にすることもある。いずれも一日分を炊いておく。汁の実は大根、白菜、さつまいも、里芋、ねぎ。漬物は大根、菜類の切り漬、しその実漬となり、夏と様変わりする。
昼は朝食とだいたい同じ。大人で麦飯三杯、味噌汁二杯はふつうである。よく働くので、「すき腹にまずいものなし」。田畑が遠ければ、野良に弁当を持参することもある。おはちか重箱であるが、お茶はそのときに家から運ぶ。いずれにせよ、たいして食休みもしないで作業にかかる。
夜は麦飯に味噌汁、漬物。きのこ汁のこともある。手打ちうどんに、きのこのうどんつゆは、秋の味覚である。さつまいも、ごぼう、にんじん、ねぎなどのてんぷらもつくる。さんまを五分ぐらいにぶつ切りにし、飯とたき合わせてさんま飯にしたり、豊漁で安くなれば、味噌漬にして食べる。葉とうがらしのつくだ煮も秋の香りである。
やわらかい日ざしのもとで、麦播きの準備の畑うないは、鍬で起こせば、夫婦で一日五畝ぐらいしかできない。こういう日は、五回食事をとる。
間食はさつまいも。ふかしいもを、えびら(熊笹で編んだ浅いざる)に入れ、かまどの上などに置いて自由に食べる。

写真:秋の夕食
上:さんまの味噌漬と白菜の漬物/下:麦飯、しめじの味噌汁

 

出典:桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.167-168

関連書籍詳細

日本の食生活全集8『聞き書 茨城の食事』

桜井武雄 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850387
発行日:1985/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5判上製 348頁

「新豆できたから納豆寝せべ」穀類豊富な県央畑作地帯、水郷ならではの淡水魚を利用した南部水田地帯。水陸の幸を素材に食事づくりを手がけてきた主婦からの聞書きによってまとめた「常世の国」茨城の食事。
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