聞き書 茨城の食事 北部山間地帯の食より
朝食は麦飯、味噌汁、漬物。ときには麦飯に大根、里芋、さつまいもを入れ、大根飯、いも飯にすることもある。いずれも一日分を炊いておく。汁の実は大根、白菜、さつまいも、里芋、ねぎ。漬物は大根、菜類の切り漬、しその実漬となり、夏と様変わりする。
昼は朝食とだいたい同じ。大人で麦飯三杯、味噌汁二杯はふつうである。よく働くので、「すき腹にまずいものなし」。田畑が遠ければ、野良に弁当を持参することもある。おはちか重箱であるが、お茶はそのときに家から運ぶ。いずれにせよ、たいして食休みもしないで作業にかかる。
夜は麦飯に味噌汁、漬物。きのこ汁のこともある。手打ちうどんに、きのこのうどんつゆは、秋の味覚である。さつまいも、ごぼう、にんじん、ねぎなどのてんぷらもつくる。さんまを五分ぐらいにぶつ切りにし、飯とたき合わせてさんま飯にしたり、豊漁で安くなれば、味噌漬にして食べる。葉とうがらしのつくだ煮も秋の香りである。
やわらかい日ざしのもとで、麦播きの準備の畑うないは、鍬で起こせば、夫婦で一日五畝ぐらいしかできない。こういう日は、五回食事をとる。
間食はさつまいも。ふかしいもを、えびら(熊笹で編んだ浅いざる)に入れ、かまどの上などに置いて自由に食べる。
写真:秋の夕食
上:さんまの味噌漬と白菜の漬物/下:麦飯、しめじの味噌汁
出典:桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.167-168