パン食と麦ごはんの二本立てではじまる一日――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年02月21日

聞き書 大阪の食事 大阪町場の食より

使用人の朝ごはん――麦ごはん、おむしのおつゆ、生卵、漬物
だんさんは、大だんさんとともに、英国、米国、印度、中国などへ仕事で何度も行っており、そのときの習慣で、朝は自分だけパン食にしている。果物を先に食べてからパンを食べる。黒パンが健康によいと聞き、「明治屋」から配達してもらい、毎朝、バターを少量つけて食べる。いちごジャムやマーマレードを塗るときもある。紅茶は、海外で買ってきたものもあるが、「明治屋」のリプトン紅茶をよく飲む。
家族や使用人は麦ごはんで、白米に二割ていどの押し麦を入れて炊く。麦を入れるのは脚気にならないようにするためである。
味噌汁のことは、おむし(味噌)のおつゆという。おむしは、前の晩に女中さんがすり鉢で八丁味噌をする。八丁味噌は渋みがあるので大阪味噌(白味噌)を少し混ぜる。だしはいつもかつお節をけずったもの。おつゆの実は一年中あまり変わらないが、季節のものを多く使う。大根、里芋、青ねぎ、しじみ、豆腐、麩、わかめなど。
魚の干ものは、かますやかわはぎを焼き、大根おろしを必ず添える。大根をおろした汁の中にはからだによいものがあるから、すてないで食べるようにという大だんさんの教えで、家族の朝ごはんには必ず添えられる。

写真:だんさんの朝ごはん
果物、黒パンとバター、半熟卵、紅茶

 

出典:上島幸子 他編. 日本の食生活全集 27巻『聞き書 大阪の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.42-46

関連書籍詳細

日本の食生活全集27『聞き書 大阪の食事』

上島幸子 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540900099
発行日:1991/2
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 392頁

商人の町・大阪は、日本中の一流の物産が集まる「天下の台所」。船場、天満の商家、月給取り、近在の農家・漁家の食卓に、「食い倒れ」の真相を探る。写真を添えて料理を再現した食の歳時記。
田舎の本屋で購入

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