聞き書 大阪の食事 北河内(淀川流域)の食より
春になると、食事つくりに手間をかけていられなくなる。菜種菜を使って漬物、ひたしをよくつくる。一方、畑にえんどう、そらまめができるので食卓に変化がつく。山手の親せきからたけのこをもらって、煮つけ、木の芽あえをつくる。
川の水がぬるんでくると、水恋しい子どもたちは待ってましたとばかり土田(湿田)へ入り、たにしをひろう。たにしはわけぎと酢味噌あえにする。
川魚とりは、川岸の草の間に隠れているふな、もろこ、どじょうを舟から棒で追いながら網へ追いこむ。ふなはよく泥を吐かせてから三枚におろし、薄つくりにして酢味噌であえたてっぷあえにする。忙しくなる前にもろこと大豆を煮て、じゃこ豆をたっぷりつくる。
■間食、おやつ――にぎり飯、じゃがいもの塩ゆでなど
裏作の収穫どきはよく腹がすくので、間食に、にぎり飯にきな粉をまぶして、こうこと一緒に食べる。
学校へ通う子もよく腹をへらす。家へ帰るなり「腹へった、なんど(何かちょうだい)」といえば、「腹へったらまま食っとけ」の母の声。こんこ茶漬(たくあんと麦飯の茶漬)かおにぎりが、育ち盛りの子どもには一番のおやつである。
対馬江には「くわせんや」という駄菓子屋がある。一銭持って、どんぐりあめ(あめ玉)、せんべいを買うこともたまにはある。
写真:春の間食
きな粉をまぶしたにぎり飯と、こうこ
出典:上島幸子 他編. 日本の食生活全集 27巻『聞き書 大阪の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.190-191