子どもがとってくるどじょう、うなぎも――日常の食生活

連載日本の食生活全集

2023年04月06日

聞き書 茨城の食事 県央畑作地帯の食より

農作業は忙しくなり、夜なべもおそくまで続く。麦の中耕、さつまいもの床つくり、じゃがいも植え、桑の帯(結束)ときと、急に仕事がふえる。朝、夜が白むのが早いので、起きて手を洗い、顔を洗っても、はっきり目が覚めない。

農作業が終わるとへとへとに疲れ、野良からの帰りには両足がふるえる。夕食のしたくはおっくうである。朝と同じに、ごはんと味噌汁を炊く。おかずにはあまり手間をかけず、買ったものが多くなる。
春先、「忙しくなるから買っておけ」といわれ、塩ますを何本も買いこむ。切身にして焼けばよい。三食のおかずを塩ますですます日もある。このほか切りこぶ、くずこぶ、するめいかの足も買っておく。袋に入った切りこぶを、きざんだ油揚げと一緒に煮たり、いかの足をだしに、くずこぶを煮たりする。
子どもたちが、どじょうやうなぎをとってくることがある。どじょうなべやかば焼き、ろうそく焼き(ぶつ切りを串焼きして醤油煮にしたもの)にすれば、けっこう夕食のおかずになる。
たまに湊から来るぼでふり(魚の行商人)から背黒いわしを買うこともある。「いわしが来たんなら、ぬたの用意をしてこうよ(来いよ)」とおとっつぁんにいわれると、昼は早めに家に戻り、骨を抜いて酢に漬けておく。
子どものおやつには、いも穴の、のうぼち(わらで編んだ雨よけ)を開け、さつまいもを掘り出し、種いもの残りをふかしてざるに入れておく。また、子どもは焼き米をつくるのを楽しみに待つ。苗代に播いた種籾の残りを炒ってから臼で搗き、ふくべに入れて子どもにあずけておくと、田植えのころまで食べつなげる。

写真:春の夕食
上:漬物(からしな)、おから炒り/下:麦飯、さとまめ(さやえんどう)の味噌汁

 

出典:桜井武雄 他編. 日本の食生活全集 8巻『聞き書 茨城の食事』. 農山漁村文化協会, 1985, p.20-22

関連書籍詳細

日本の食生活全集8『聞き書 茨城の食事』

桜井武雄 他編
定価3,850円 (税込)
ISBN:9784540850387
発行日:1985/10
出版:農山漁村文化協会(農文協)
判型/頁数:A5上製 348頁

「新豆できたから納豆寝せべ」穀類豊富な県央畑作地帯、水郷ならではの淡水魚を利用した南部水田地帯。水陸の幸を素材に食事づくりを手がけてきた主婦からの聞書きによってまとめた「常世の国」茨城の食事。
田舎の本屋で購入

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