聞き書 千葉の食事 北総台地の食より
■いも出し
こぶしの花が咲きだすと、畑へ行っていも出しをする。里芋は秋に収穫するが、冬の間、いも穴に貯蔵しておいて、春になってから売りに出す。こうすれば、夏の大麦、秋の落花生、春先の里芋、初夏の茶、それに春、夏、秋の繭と、年中何かしら売りものがあるということになる。
一〇間長さのいも穴三本のいも出しは、手伝いの人たちを混ぜて一〇人くらいが手分けをして二、三日続く。いもが続々と畑土の上にあげられ、つくり手はつくり、かごに入れる。俵ができあがるころ、八街駅近くの問屋から馬車が運びにくる。
昼になると、弁当の運び手が麦飯をお鉢で畑へ持ってくる。
おかずは車麩と切りこぶの煮ものと落花味噌。こうこはたくあん。むしろに広げられた昼餉の中からおかずを一はしはさみ、青空に行く白い雲を仰ぎながら飯をほおばる。
写真:いも出しの日の弁当
お鉢:麦飯/切りだめ:車麩と切りこぶの煮もの、落花味噌/こうこ
出典:高橋在久 他編. 日本の食生活全集 12巻『聞き書 千葉の食事』. 農山漁村文化協会, 1989, p.230-232