聞き書 徳島の食事 祖谷山の食より
■端午の節句
旧五月五日はまきを巻く。まきは、小麦粉に塩を入れて練ったものを細長い形にして、よしの葉五枚ぐらいで包み、しろ(しゅろ)の葉を割いたもので巻いてゆでる。
まきを炊いた汁で足を洗うと、はめ(毒へび)にかまれないというので、毎年、必ず洗っている。はめはよく見かける。畑仕事も、山仕事もぞうりなので危ないが、おかげでかまれたことはない。 また、すしやきな粉のぼたもちをつくる。白米をやわらかく炊いて、砂糖と塩を混ぜ、丸くにぎり、きな粉をまわりにつける。きな粉には味をつけないが、ごはんに味がついていておいしい。
しょうぶを仏にまつり、お茶を入れるときにもやかんに二、三本そのまま入れる。おなかの痛い人は、しょうぶの葉を腹に巻き、頭の痛い人は頭に巻く。
五月の節句には、こんにゃく、にんじん、ごぼう、ぜんまいの煮しめの中にしおでの新芽も入れて煮しめる。
写真:端午の節句のごちそう
左上:よしの葉で巻いたまき/右上:ごはんに味をつけてきな粉をまぶしたぼたもち/下:すし
出典:立石一 他編. 日本の食生活全集 36巻『聞き書 徳島の食事』. 農山漁村文化協会, 1990, p.77-79