聞き書 滋賀の食事 琵琶湖沖島の食より
■夕――麦飯、澄まし汁、にしんときゅうりの酢のもの、がんぞのじょきまたはへらのおつくり、焼きなすび、ごりの塩ゆで
夏は麦飯に澄まし汁で、味噌汁はつくらない。澄まし汁には、なすび、干しかんぴょうがつきもので、油揚げのだしでつくる。干しかんぴょうを入れると甘みが出るのでよく入れる。ごはんは、六月にえんどう豆を収穫するので豆ごはんをつくることもある。また、肥にしんのよさそうなところを石でかち(砕き)、やわらかくしてきゅうりと味噌か酢であえたものをつくる。
このほか、へら(げんごろうぶな)のおつくり(刺身)、がんぞやわたこのじょき(背ごしのようなもの)、なまず、わたこ、ぎぎ、うぐいの煮つけなど、値の安く売れない魚を日常のおかずにする。とくに七、八月ごろには、底曳網でごり(うろりともいう。よしのぼりの稚魚)をとるが、大変やわらかく鮮度の落ちが早い値の安い魚なので、毎日のように塩ゆでにして二杯酢をかけて食べる。
このころには、かぼちゃの煮もの、かんぴょうのさなご(中心部の種のある部分)の煮もの、ごぼうのしの(間引き葉)の炒め煮などもつくる。
写真:夏の夕食
〔左から時計回りに〕焼きなすび、ごりの塩ゆで、にしんときゅうりの酢のもの、なすびの澄まし汁、豆ごはん。中央はがんぞのじょき
出典:橋本鉄男 他編. 日本の食生活全集 25巻『聞き書 滋賀の食事』. 農山漁村文化協会, 1991, p.30-32